にがり水による便秘対策
はじめに
高齢者のかかえる合併症の1つに便秘が考えられる。2N病棟では寝たきりの高齢者が90%以上をしめており、常に座薬や浣腸、摘便を施行する患者様が10人〜15人程度みられ、摘便を施行しても硬く出血する事もあります。(図①)
その便秘の原因には高齢者の水分不足も要因と考えられます。その為、私たちは水分の補給を促しマグネシウムなどのミネラルの豊富なにがり水を使用する事により自然排便を促進できないかと考え実施した結果をここに報告します。
① 期間 平成16年5月6日から3ヶ月間
② 対象 経管栄養者9名、経口摂取者6名の計15名
③ 方法
〈経管栄養者〉 1)白湯200ml + にがり10滴
(にがりは100ml中 マグネシウムが1100mgが入ったものを使用。
マグネシウム内容量33mg)
2)効果がなく少しずつ増量する
3)白湯200ml + にがり4滴
(使用するにがりを変更。にがりは100ml中 マグネシウムが7400mg
入ったものを使用。マグネシウム内容量88.8mg)
〈経口摂取者〉 1)昼食時 ごはんに10滴
(にがりは100ml中 マグネシウムが1100mgが入ったものを使用。
マグネシウム内容量33mg)
2)効果がなく少しずつ増量する
3)昼食時 ごはんorみそ汁に4滴
(使用するにがりを変更。にがりは100ml中 マグネシウムが7400mg
入ったものを使用。マグネシウム内容量88.8mg)
☆ 1滴は0.3mlとしました。
☆ 鉄、亜鉛など不足しがちなため、補足することもできた。
☆ 塩化ナトリウムも最大1.5gの摂取で問題はないが、
塩分制限のある患者様には使用しなかった。
☆ 経管栄養者には、昼に白湯200mlを追加した。
(当院では、2回/日の経栄のため)
☆ 内服は継続する。定期の緩下剤(シンラック)は中止
にがり水の分析表(100gあたり) | |
熱量 | 0k㌍ |
塩化ナトリウム | 1300 mg |
カルシウムイオン | 0.69 mg |
鉄 | 0.1 mg |
カリウムイオン | 620 mg |
マグネシウムイオン | 7400 mg |
亜鉛 | 0.5 mg |
マンガン | 1.8 mg |
硫酸イオン | 5900 mg |
結果
①にがり水を使用することにより、処置回数が減った(図②〜図④)



②対象者の便の硬さが硬便から軟便になった。(図⑤)

③にがりはにがりのみを使用するより十分な水分補給を同時にするとより効果が得られた。(図⑥)

考察
今回3ヵ月間15名の患者様に対しにがり水を使用した結果、実行前は硬便、付着便、または3日以上排便が無くて何らかの処置を必要とする患者様が大半を占めていた。
にがり水を開始した当初はあまり効果が見られず、3週間後ににがり水を増量した結果、自然排便が見られるようになってきた。
経管栄養摂取者はにがり水により、全体の水分摂取量も増加していることから効果が早く現れてきた。
経口摂取者は効果が現れてきた人もいるが、ガスが貯留して、すぐ処置を必要としたり、にがり水を使用しても自然排便が出来ない患者様もいた。
また、にがり水の効果が強く下痢になった患者様も数名いたが、にがり水を1日置きにする等して調整を行った。
にがり中のマグネシウムは腸内に水分を溜める働きがあり、経管栄養者にはより効果が現れたと思われた。
経口摂取者には、にがり水と水分摂取を同時に進めていくことが今後必要であると感じた。また、にがり水を使用しても体重の増減もあまり無かった事から、患者様の健康的な便の排泄を促すことが出来たのではないかと考えられる。
おわりに
寝たきり高齢者の排便コントロールは下剤、浣腸、摘便をするのは、やむ得ないと考えていたが、今回この研究を実施したところ、にがりと十分な水分補給を行うことにより薬剤処置の回数が減り自然排便がみられるようになった。今後も2N病棟では、にがり水を継続して自然排便が出来るように努力していきたいと思います。
参考文献
① わかさ 2003年 12月号 株式会社わかさ出版 P16〜P17
② http://www.hapima.com/sh/giazz/nigari/
③ http://www.di-hana.com/kaiyousui/