巻頭言 ほほえみ第40号(平成16年4月号) 『欧州緩和ケア視察に参加して』

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巻頭言 ほほえみ第40号(平成16年4月号) 『欧州緩和ケア視察に参加して』

2004.04.01

 2月に公立井波の倉知院長を団長とする「第2回欧州緩和ケア視察旅行」に参加しました。まず、ロンドン郊外にあるセント・クリストファー・ホスピスを訪ねましたが、この世界中から見学者が絶えないホスピス誕生の地は、交通量の多くない通りに面した目立たない質素な建物でした。教育システムが確立されており、緩和ケア・ホスピスに関する世界の情報センターでもあります。4病棟で48床のホスピスですが、200万人の住域をカバーし、毎日500人の在宅ターミナルケアを24時間行っていました。医療関係者の他に多数のボランティア(日本でいう無償ボランティアはいない)の支援があるとのことでしたが、日本人の感覚とはあまりにも違いすぎてピンときません。ホスピスを見学しましたが、簡素で普通の4人部屋という印象でした。家族が寝泊りする部屋があり、緊急時にそなえて予備の部屋も設けてありました。多数のボランティアが出入りしていました。死後3ヶ月と1年後に家族のミーティングを必ず行っています。

 

 

オランダでは、ベルギーとの国境に近い村のグループホームを見学し、その午後にロッテルダム近郊の先駆的なナーシングホーム(200床は身体介護用、60床は痴呆用、8床の個室はターミナルケア用)を、翌日はアムステルダムで大学メディカルセンターとナーシングホーム内にある緩和ケアネットワークと市中の8床のホスピスを見学しました。

 

4棟あるグループホームは6床6人が1単位です。日本では9人単位が多いと質問すると、家庭的な雰囲気で過ごすには6人が適当だといわれ納得しました。この州では、従来は大規模施設が中心だったのですが、徐々に各地に小規模施設を建築したと説明され、まさに日本の厚労省が最近提案している小規模多機能施設のモデルです。住宅とケアが一つの地域にあり、共に生き、共に働くことができます。グループホームにはナーシングホームやデイセンターが併設され、吹き抜けの食堂ではボランティアと一緒に大勢の障害者、高齢者が談笑していました。

 

 オランダは北欧並みの高福祉高負担の国です。マリファナを吸ってもよいし、飾り窓が知られているように、性産業が公認され、そして安楽死が法的に認められている唯一の国です。オランダでは、30%の人が自宅で死を迎えており、癌患者に限れば実に75%の人が在宅死です。日本の癌患者は大多数が病院で亡くなり、在宅死はほぼゼロで、3%が百二十余施設ある緩和ケア病棟で亡くなられます。オランダは多数のボランティアを含めた充実した医療・介護の在宅サービスのネットワークがあり、障害を持っていても在宅生活が可能であるノーマライゼーションの理念が浸透していることや、医療費は無料で、自由に使える年金が確保されているなどの日本とは全く違う背景がありますが、オランダ人は「自己決定」で在宅療養・在宅死を選んでいるようです。医療を受ける時も、自分で病院を選ぶことは出来ず、まずホームドクターの診察が必要ですし、介護を受ける際も、ナーシングホームへ入るか老人ホームか自宅かは審査会に決定権があるなど多くの制約があります。急変時の対応は、日本ほどスムーズではないものの、緩和ケア病棟やホスピスに関しては、いつでも受け入れる体制が整っているように思えました。

 

 建物を壊さないので、都市の景観は百年前と変わらないし、道路には必ず自転車専用路があるなど、日本とは風土も人種も違うイギリス・オランダですが、少子化、高齢化が徐々に進行しているのは同じです。ほとんどが公営か財団立である病院の数は日本に比べて両国とも少なく、入院も短期間です。欧州の人は、医療、特に病院での治療は金がかかるので、本当に治療が必要な時だけ医療費を使うべきだという認識が日本に比べて強いようです。日本の皆保険制度はいつでもどこでも医者にかかれるという世界に誇れる制度ではありますが、老人医療は本人の意志ではなく、家族の意向を重視しすぎる傾向があります。超高齢者にペースメーカー、人工股関節、栄養チューブなどの治療をするのは胸を張って医療費の無駄使いでないと言い切れるのか疑問です。日本人はもっと健康寿命や尊厳死について認識を深める必要があるのではないでしょうか。日本人の死生観や医療制度について考えさせられた今回の欧州研修でした。

 

 さて、4月に診療報酬の改正がありますが、医療費抑制策がますます強まり、病院機能の明確化が求められ、あやふやな理念の病院は淘汰される時代になりました。当法人には患者さんに安心して継続して療養してもらうため、さまざまな施設・在宅メニューがありますが、より一層在宅サービスを充実させ、多様なニーズにきめ細かく対応していきたいと思っています。病院でのケアマネージャーの常勤化が軌道に乗り、連携室では県下初の特殊疾患療養病棟開設がインパクトとなって特に基幹病院との連携がスムーズなようです。

 

昨冬は新聞社と共催で介護セミナーを開催しましたし、ボランティアのご協力を得て病棟毎に四季折々の催し物を行ったり、公民館などに出向いてセミナーを開いたりしていますが、地域に根ざし、開かれた施設であるということを認めてもらうには絶え間ない努力が欠かせません。今後、病院に隣接してグループホームの移転増床、通所リハビリの拡張移転、ショートステイ棟の増床を視野に入れながら、病院の改築を含め、法人の将来構想を模索中です。

 

紫蘭会理事長  笠島 學

 

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