2000 8月

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『検診発見乳癌の経験』 医報とやま

「医報とやま」2000年8月1日号に掲載(一部加筆)

『検診発見乳癌の経験 』

サンシャイン・メドック(光ヶ丘病院人間ドック部門) 外科(高岡市)

笠島 學、豊田恒良
「要旨」

サンシャイン・メドック開設以来、7年余に経験した視触診・マンモグラフィー・USを併用した乳癌検診(延べ1902人、実人数847人)を検討した。4例の発見乳癌は、すべて自覚症状が無かった。また、癌発見率は0.21%であり、県健康増進センターの0.08%前後より若干高い数値であった。発見乳癌を検討してみると、触診で指摘された2例はしこりの自覚が無く、触診の重要さを再認識した。繰り返し受診者にも癌は見つかるので、乳癌検診は毎年受ける必要があり、自己検診の啓蒙・普及を保健・医療関係者は怠ってはいけないと思われた。また、嚢胞などの良性疾患の存在にとらわれて、他の部にある癌を見落とさないよう慎重な診断力が痛感された。乳癌の診断で、マンモグラフィーは確かに有効であるが、USも捨てたものではないこと、特に、病変が指摘された場合のUS診断能は優れたものがあることが再認識された。 まず、乳腺に関心をもって視触診、US、マンモグラフィーのそれぞれの診断能力を高めるよう研鑚することが重要であり、癌が疑われる場合は積極的にUSガイド下細胞検査を行うなど、見落としをなくすよう努力していきたい。
「はじめに」

平成5年3月に、病院に隣接して専用スペースを新築し、日帰り人間ドックを開始したが、受診者数は順調に伸び、最近ではドックと検診を合わせて、年間3 千人を超える利用者がある(図1)。政府管掌健康保険の非指定施設にしては健闘している方だと思っている。

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平成9年には県医報で、サンシャイン・メドックで発見された甲状腺癌6例の報告1)をしたが、今回は乳癌について検討してみた。

「対象および方法」

図1に乳癌検診をうけた受診者数の年度別推移を示したが、女性の受診者が少ないこともあり、総受診者の1割強を占めるに過ぎない。平成12年5月までの7年余に、延べ1,902人、実人数847人が乳癌検診を受診された。次第に繰り返し受診者が多くなる傾向が見られる(図2)。

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乳癌検診は原則として、視触診・マンモグラフィー( X線)・超音波検査(US)の3者を併用した。マンモグラフィーは東芝製MGS-02A で、左右斜め1方向ずつ撮影した。フイルムは平成11年2月よりデジタル画像処理をしている。読影はルーペを用いて行っている。

超音波診断装置は東芝製 TOSBEE、SSA-240A(中心周波数7.5MHz)で、蒸留水を満たしたカップラーを使用している。

乳管拡張が描出された場合は乳房を圧迫し、透明乳汁がみられた場合は放置するが、血性乳汁がみられたら、外来扱いとして、その場で細胞診検査をしている。癌を疑う所見が得られた場合は、受診者の承諾を得て、外来扱いとして、穿刺吸引細胞診(東芝製SSA-260Aの穿刺用プローブを使用)や腫瘤摘出術を検診当日に施行している。

「結果」

穿刺吸引細胞診は 11例に、腫瘤摘出術は4例に行ったが、穿刺した1例と腫瘤摘出を行った1例に乳癌が見つかった。最近受診した血性乳汁の1例は乳汁細胞診でクラスⅢであり、乳汁CEAが異常高値で、紹介先の病院で乳癌と診断された。

USで乳管拡張を指摘し、圧迫して乳汁が認められた例は数例あるが、全て、自覚が無かった。

4例の乳癌が発見された(癌発見率0.21%)。
「発見乳癌例その1」

44歳で、1年前にも受診しており、異常なかった。今回もしこりの自覚はない。平成9年2月に受診され、右C領域に、触診で8mmの硬結を触れた。マンモグラフィー(図3)では、不整な突出を思わせる像(矢印)がわずかに認められる。US (図4)では、後方エコーの減退を伴う1cm未満の腫瘤様のものが描出されているが、良悪性の判定は困難である。即日、摘出術を施行した。肉眼診断は乳腺線維腺腫であったが、病理ではわずかに浸潤を伴う乳癌であった。

「発見乳癌例その2」

51歳で、他院で左乳腺嚢胞を指摘されているが、良性といわれている。全身状態のチェックを希望され、平成10年1月に人間ドックを受診された。マンモグラフィー(図5)ではC領域(写真では左下)に円形の境界明瞭な陰影がみられ、少し離れたところに粗な石灰化像を認める。また、乳頭の内側(矢印)には微少顆粒状の石灰化像が散在している。(写真にすると非常にわかりにくいが、実物のフイルムでは比較的容易に指摘できる。)US像(図6)では、乳頭付近のB領域に不整形の腫瘤が見られ、腫瘤の内部には高エコースポットを伴っている。乳癌を強く示唆する所見であった。なお、USでC領域に比較的大きな嚢胞がみられた。手術標本では、非浸潤部がほとんどで、ごく一部の浸潤を伴う乳癌であった。

「発見乳癌その3」

46歳で、繰り返し受診者であり、1年前と2年前は異常なしであった。今回(平成12年4月)は自覚症状が無いので、マンモグラフィーは希望されなかった。ところが、触診で、しこり様のものがあり、マンモグラフィーを撮ると、微少顆粒状の石灰化像が描出(図7)された。2年前のマンモグラフィー(図8)を改めて読影したが、異常所見は認められなかった。US像(図9)では、左C領域に辺縁は比較的明瞭だが、一部不正形で、縦方向では縦長の1.4cmの腫瘤が認められ、腫瘤内には石灰化を思わせる高エコースポットが散在しており、乳癌を疑わせる所見であった。

「発見乳癌その4.血性乳汁例」

55歳で、毎年検診を受けているが、いつも異常なしであった。今回も自覚症状はなし。US(図10)で、左側のみに乳管拡張が認められたが、腫瘤像は描出されなかった。圧迫すると血性乳汁が出たので細胞診に提出し、クラスⅢであった。マンモグラフィーでは今回撮らなかったが、1年前では異常所見を認めなかった。精査の結果、乳癌と診断され、乳腺部分切除が施行された。

「考察」

乳癌検診は老健法では視触診で行うとされているが、視触診の診断能は7割とされ、早期乳癌、特に非触知乳癌の診断には無力のことが多く、画像診断の併用が望ましい。富山県健康増進センターでは、早くから視触診に加えて、USを全例に併用し、富山県方式ともてはやされた時もあり、私も何度か発表したが、乳癌発見率は全国平均と同じ0.08%前後であり、乳癌発見率の向上には至らなかった2)、3)。USは、触診で有所見部位があれば、その部位を、所見が無ければC領域を技師がスキャンしているが、1cm間隔の静止画像であり、リアルタイム画像ではないことや、乳房全体を検索していないことが致命的な欠陥であろう。また、年間3万人を出張型超音波検診(バスに搭載)で施行している現状では、全症例を、リアルタイムで全乳房をUSで検索するのは、質量ともにマンパワー不足で、無理な相談である。USは検診には有効で、非触知乳癌発見例の43%がUSで腫瘤像として捉えられたとの報告4)もあり、dense breastの多い若年者では、USの方がマンモグラフィーより高い癌発見率であったという報告も散見される。しかし、今やマンモグラフィーを乳癌検診に取り入れるのが常識になってきており、マンモグラフィーを併用した乳癌検診での乳癌発見率は高く、0.31%5)、0.73%6)などの報告がある。当施設でも、少数例ではあるが従来の検診より良好な結果を得ている。最近、健康増進センターの施設内にマンモグラフィーが導入されたが、今後は出張検診より施設内検診が主力となり、乳腺に造詣が深く読影能力の優れた医師の育成が必須となろう。

「文献」

1)笠島 學、川東正範:超音波検査による甲状腺検診の経験.医報とやま1187:13-17, 1997(3月15日号)

2)笠島 學、山本恵一ほか:富山県における乳癌集検の現状と問題点.日乳癌検診学会誌 3:71-74, 1994

3)笠島 學、山本恵一ほか:一次検診において超音波検査を併施する乳癌集団検診(富山県方式)について.日乳癌検診学会誌 2:223-228, 1993

4)松永忠東、中山 俊ほか:非触知乳癌の診断と病理所見.日乳癌検診学会誌 9:103-110, 2000

5)笹 三徳、森本忠興ほか:49歳以下女性に対するマンモグラフィ併用検診.日乳癌検診学会誌 9:147-150, 2000

6)丸山 勝、大場 忍ほか:40歳代検診にはMMG、USの併用を. 日乳癌検診学会誌 9:161-165, 2000

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