2003 9月

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『長期臥床によりADLが低下したCOPD患者の運動療法』 日本呼吸管理学会誌Vol.13 No.1

日本呼吸管理学会誌 Vol.13 No.1 2003 より

長期臥床によりADLが低下したCOPD患者の運動療法

光ヶ丘病院

大和 寿久  豊田 恒良  湊 麻由美



はじめに

COPDでは呼吸苦、易疲労性、意欲の低下が運動療法をすすめる上で主な阻害因子となる。長期臥床になると筋萎縮、関節拘縮などのいわゆる廃用症候群が加わり、寝たきりとなることが少なくない。運動療法は呼吸苦、運動耐久性、QOLを改善させるのに効果的であることは知られ、COPDの患者には効果的な治療として確立されている。しかしながら、長期臥床したCOPDの患者にも運動療法が有効であることは今でも知られていない。そこで今回、呼吸苦とADLの改善につながった2症例を報告する。



対象

平成13年に入院した長期臥床によりADLが低下したCOPDの2症例である。



方法

運動療法としてADL訓練、歩行、ストレッチ、下肢筋の強化を行なった。パルスオキシメーターでSPO2 85%以下または新Borg scale 5以上になったら運動療法は中止した。

呼吸苦(Borg scale)、ADL(Barthel index)、筋力(Daniels法)を評価し比較検討した。



症例1

86歳 男性 20歳〜50歳過ぎまでの約30年間タバコを40〜50本/日喫煙していた。在宅酸素療法を含む加療・経過観察を行っていた。経過中、気道感染を契機に呼吸不全の増悪を来たし、入退院を繰り返していた。平成12年9月25日に呼吸不全の増悪があり某病院に入院したがADLが徐々に低下し寝たきりとなる。同時に肺炎を繰り返し、一時意識障害・摂食障害が続く時期があった。リハビリ目的にて平成13年3月26日当院に入院した。運動療法は平成13年3月27日より開始した。平成13年5月3日ポータブルトイレを自力で使用しようとして転倒して右第6肋骨骨折となる。平成13年7月28日より一般浴槽で入浴可能となる。平成13年9月22日自宅へ退院した。



症例2

76歳 女性 喫煙歴はなし。慢性呼吸不全が平成13年11月初旬より増悪し、寝たきりとなり同年11月9日某病院に入院する。症状安定し、元の介護療養病院に戻る。治療困難なため平成13年12月3日当院に入院した。入院2日目に肺梗塞を発症し、PH 7.48 PaO2 37torr PaCO2 32torr(酸素6L/分投与マスク使用)と急激に悪化した。運動療法は12月8日より寝返り訓練を開始した。病状安定し、平成14年3月8日介護療養病棟へ転棟した。



結果

血液ガス

                  症例1

入院時

 PH7.42  PaO267torr  PaCO240torr(酸素3L/分)

退院時

PH7.43  PaO266torr  PaCO244torr(酸素3L./分)

                  症例2

入院時

 PH7.42  PaO289torr  PaCO244torr(酸素1L/分)

転棟時

 PH7.43  PaO259torr  PaCO241torr(酸素3L/分)





呼吸苦

     症例1

     症例2

入院時

Borg scale7

入院時

Borg scale2

退院時

Borg scale2

転棟時

Borg scale1

ベッド上での起き上がり動作で評価




筋力(Daniels法)

筋肉名

     症例1

     症例2

入院時

退院時

入院時

転棟時

腹斜筋

2

4

4

4

腹筋

2

4

3

4

腸腰筋

3

4

3

4

大腿四頭筋

3

4

3

4

中臀筋

3

4

3

4

膝関節屈筋群

3

4

3

4




ADL(Barthel Index)
     症例1      症例2
入院時 20/100 入院時 20/100
退院時 80/100 転棟時 60/100



1. 呼吸苦と体幹、下肢の筋力、ADLは改善した。運動療法は長期臥床によりADLが低下したCOPDに対して効果があった。

2. SpO290%以下になったら運動療法を中止している報告があるがSpO285%以上で運動療法は可能であった。

考察

長期臥床したCOPDは呼吸苦、廃用性筋萎縮、関節拘縮等のため寝たきりになり易い。呼吸苦の減少とQOLの改善が呼吸リハビリテーションの重要なゴールの一つである。2症例とも呼吸苦と体幹、下肢の筋力は改善し、ADLは向上した。酸素療法を受けている長期臥床によりADLが低下したCOPDでも転倒・感染に留意し、積極的に運動療法を施行することにより呼吸苦と体幹、下肢の筋力、ADL改善は十分可能であると考える。パルスオキシメーターでSpO2を計測することで客観的に呼吸苦を評価可能であり、安全に運動療法を施行する上で重要だと考える。SpO290%以下になると運動療法を中止している報告が多数あるが、2症例ともSpO285%以上で運動療法を施行できた。運動療法を施行する上で許されるSpO2の下限を検討する必要性が示唆された。しかし、症例数が少ないので継続して検討する必要がある。

『ギャッチアップにおける2時間以上の体位変換の検討』 日本褥瘡学会誌Vo5 No.2

ギャッチアップ以上の体位変換―光ケ丘病院 1Nにおける2時間の検討
目的
褥瘡発生予防において2時間おきの体位変換は必須とされている。しかし、その体位変換が、患者の安眠障害の原因になり、夜勤者のマンパワー不足もあり、必ずしも安易に実行出来ない。また、ギャッチアップ時のずれの予防として足上げギャッチアップと30度ギャッチアップの体位変換が下肢拘縮患者においてずれの原因となり、また足上げギャッチアップによりかえって下肢拘縮が進むことにもなりかねない。そこで、エアーマット使用患者に対しギャッチアップ時の2時間以上の体位変換を行い、褥瘡発生の危険につき検討した。
対象
ブレーデンスケールが14点以下の患者16名である。全症例が自力体位変換不可能で、何らかの危険因子(病的骨突出、関節拘縮、栄養不良、皮膚湿潤、浮腫)を有していた。
方法
全症例に体圧分散寝具として、二層式エアーマット(トライセル)を使用。ギャッチアップ時の角度を10度、20度、30度とした。また、それぞれの角度において足上げの有無のずれについて検討した。(モルテン社、プレディア使用)体位変換時間は同一体位で、2時間後、4時間後、5時間後の骨突出部の皮膚を観察し発赤の有無を観認した。なお、発赤が確認された場合は、その時点で同一体位は中止した。また、マルチパット型簡易体圧測定器(ケープ社、Cello)を使用し、各時間に体圧測定を実施した。体圧測定部位は、仙骨部、側臥位では、大転子とした。
結果
皮膚非発赤例症例が60%以上を示したのはギャッチアップ角度が0度、10度で4時間まで、20度で2時間まで、30度では2時間以下であった。

考察
同一体位2時間以上可能なのは、仰臥位ではジャッチアップ角度10度まで、左右側臥位では20度までと考えられた。同一体位2時間で皮膚発赤を認めた症例は、非発赤症例と比べ病的骨突出と関節拘縮が強度であった。
結語
同一体位2時間以上のギャッチアップは危険と考えられた。
体圧が褥瘡発生危険値(40mmHg以下)であっても発赤を認めた症例より、病的骨突出と関節拘縮が強度の場合は、肉眼的発赤の観察が褥瘡発生予防に重要と思われた。

 

 

 

 

16例の下肢挙上有無でのズレ比較
(5N以上をズレ有りとした。)


image-kenkyuH15918-1


image-kenkyuH15918-2




目的
経管栄養投与、呼吸器疾患患者では頭位挙上(ギャチアップ)は必須である。しかし褥瘡発生予防のためには、どの程度の角度、時間までなら可能なのか明確にされていない。そこで、ギャチアップ角度と、経時的な体圧と皮膚発赤の変化を調べ検討した。

対象
療養型医療施設に入院し、要介護4以上、ブレーデンスケールが14点以下の患者16名。全例自立度C2で、何らかの危険因子、病的骨突出・関節拘縮・栄養状態の低下(血清ALB3.0g/dl未満、Hb11.0g/dl未満)・皮膚湿潤・浮腫を有していた。


仰臥位におけるギャチアップ角度と経時的体圧変化
皮膚非発赤症例の割合(全16例中)

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右下側臥位におけるギャチアップ角度と経時的体圧変化皮膚非発赤症例の割合(全16例中)

image-kenkyuH15918-4




左下側臥位におけるギャチアップ角度と経時的体圧変化皮膚非発赤症例の割合(全16例中)

image-kenkyuH15918-5



同一体位2時間後に皮膚発赤を認めた症例

image-kenkyuH15918-6



同一体位2時間後の皮膚発赤群(7例)と非発赤群(9例)の危険因子の比較

image-kenkyuH15.918-7


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