2004 4月

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『超音波検診で発見された膀胱腫瘍の3例』 医報とやま

「医報とやま」 

2月15日号に掲載されました



超音波検診で発見された膀胱腫瘍の3例

サンシャイン・メドック(医療法人光ヶ丘病院 人間ドック部門)
笠島 學(超音波指導医・専門医)、豊田 恒良



要旨

 最近4年間にサンシャイン・メドック(人間ドック)で下腹部の超音波検査を延べ6,599名の受診者に施行したが、3例(発見率0.05%)の膀胱腫瘍が発見され、膀胱癌は2例(発見率0.03%)であった。2例の膀胱癌は、いずれも早期癌であり、尿潜血反応は陰性であった。3例とも乳頭状の腫瘍が認められ、全例経尿道的に切除された。三原らは人間ドックの超音波検査で発見された膀胱癌6例(発見率0.04%)の全例と、地域・職域集検で発見された膀胱癌の88%が尿潜血陰性であり、全例経尿道的切除が可能であったと報告しており、膀胱癌の早期発見において、超音波スクリーニングのはたす役割は極めて重要であるといえる。また、検査時に膀胱内の尿が充満していないことが多いため、正確な診断を下しにくいが、異常所見が疑われる場合は、時間をおいて膀胱充満後に再検査をすることも必要である。なお、日常診療で腹部超音波検査を施行する際、早期膀胱癌の発見のため、下腹部の検査を是非加えてもらいたいと願っている。



1.はじめに

 サンシャイン・メドックは、日帰り人間ドック専用フロアとして当院内に平成5年に開設した。受診者数は徐々に増加し、現在、人間ドック・検診を合わせると年間5千人を超えている(表1)。以前、超音波検診による6例の甲状腺癌の発見1)やマンモグラフィーと超音波検査を併用した乳癌検診の有用性2)を報告したが、今回は、ほとんど報告がされていない膀胱腫瘍の超音波検診における意義について検討した。



2.対象および方法

 平成12年1月から平成15年12月末日までの4年間に、サンシャイン・メドックで下腹部超音波検査を施行した受診者延べ6,599名を対象にした。超音波検査は、各健康保険組合様の契約に従い、甲状腺、乳腺(女性のみ)の依頼があれば、それらに引き続き上腹部を検査し、依頼が無ければ上腹部が最初で、次に下腹部を検査している。また、週に3日は上腹部と甲状腺・乳腺・下腹部の検査を異なる医師が行っている。超音波診断装置は東芝製SSA-240A(TOSBEE、中心周波数3.75MHz)で、開設以来の古い器械を使用している。



3.結果

 膀胱腫瘍は3例に認められ、発見率は0.05%であった。そのうち膀胱癌は2例発見(癌発見率0.03%)されたが、いずれも早期癌であった。超音波検診で膀胱腫瘍の疑いと診断したのは他に数例あるが、膀胱の充満を待って再検査を行い、腫瘍が否定された症例もあった。泌尿器科での膀胱鏡検査で腫瘍が認められなかった超音波像を図1、図2に示す。

 次に、膀胱腫瘍の症例を提示する。

「症例1」は50歳男性で毎年受診されており、3回目受診の平成12年、超音波検査(図3)では膀胱内にやや不正形の9mm大の腫瘤を認めた。尿定性、沈渣ともに所見は無かった。膀胱鏡検査では、左尿管付近に乳頭状の腫瘍があり、内視鏡下に腫瘍切除が施行された。病理組織検査では、早期の移行上皮癌であった。余談だが、この症例は3年後PSAが484ng/mlという異常高値のため、再び泌尿器科に紹介したが、前立腺癌であった。その時の超音波像(図4)では前立腺の異常を指摘できない。また、このように膀胱に尿が充満していない場合、超音波検査で膀胱病変を指摘するのは困難である。

「症例2」は44歳男性で、2回目受診であった。超音波像(図5)では1cm以下の膀胱腫瘍の疑いがあり紹介したが、膀胱鏡(図6)では乳頭状の腫瘍がみられ、早期の膀胱癌であった。この症例も尿所見は正常であった。

「症例3」は41歳女性で、2回目受診であった。超音波像(図7)で膀胱内に微小腫瘍の疑いがあり、尿所見では顕微鏡的血尿のため、泌尿器科受診を勧めたが、その時は受診しなかった。4ヵ月後に肉眼的血尿があったため泌尿器科を受診し、膀胱粘膜より有茎性に突出した腫瘍を認め、経尿道的に切除された。病理組織検査では嚢胞性膀胱炎であり、悪性所見は認めなかった。



4.考察

 人間ドックにおいて腹部超音波検査は必須の検査であるが、膀胱に注目した超音波スクリーニングは軽視されており、学会発表もほとんど見られない。この理由として、超音波検査を施行する大部分の医師・技師の専門領域が消化器であるので、膀胱に興味が無いことや、人間ドックの手順上、排尿直後に超音波検査を施行することが多いため、膀胱内容が少なく正確な診断を下しにくいこと等があげられる。当施設でも、超音波検査の際に膀胱が尿で充満していることはめったにないが、丹念に膀胱を観察し、小病変を見逃さないように心がけている。三原3)は、下腹部を含めた超音波スクリーニングを行った7年間の人間ドック延べ受診者13,384名で6例(0.04%)の膀胱癌が発見され、大きさは8〜18mmで、全例に経尿道的切除がされたが、尿潜血は全例陰性であったとしている。また、3年間で延べ受診者7,6420名があった地域・職場集検では、29例の膀胱癌が発見され、全例に経尿道的切除が施行され、88%の症例で尿潜血検査が陰性であったと報告している。この報告は、われわれの結果とほぼ一致しており、尿所見は膀胱癌の早期発見には全く無意味であり、超音波検査が唯一の早期発見の手段であることを示している。腹部超音波検査は、人間ドックに限らず日常診療で膨大な症例に施行されているが、上腹部のみでなく、下腹部、特に膀胱に着目した検査をおこなうことにより、膀胱癌の発見が飛躍的に伸びることが期待される。

(資料を提供していただきました長谷川徹先生に深謝いたします。)



5.文献

1)笠島 學、川東正範:超音波検査による甲状腺検診の経験.医報とやま.1187(H9.3.15):13-17,1997

2)笠島 學、豊田恒良:検診発見乳癌の経験.医報とやま.1268(H12.8.1):7-11,2000

3)三原修一、木場博幸ら:超音波スクリーニングによる膀胱癌の早期発見.健康医学(日本人間ドック学会誌):15(4):171-172,2001




表1.サンシャイン・メドックの受診者(人間ドックおよび検診)の推移
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図1. 52歳女性。時間をおいて再検査したが、やはり膀胱内に突出しているように見える。膀胱鏡では腫瘍なし。
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図2.49歳男性。膀胱鏡では腫瘍なし。
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図3. 症例1の超音波像。膀胱にやや不整形の腫瘍あり。
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図4. 症例1の3年後。膀胱は尿貯留が少なく観察不十分。前立腺癌であったが、超音波像では前立腺に異常を指摘できない。
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図5. 症例2の超音波像。膀胱内に有茎性腫瘍の疑いがある。
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図6. 症例2の膀胱鏡所見。
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図7. 症例3の超音波像。膀胱内に微小腫瘤を認める。
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巻頭言 ほほえみ第40号(平成16年4月号) 『欧州緩和ケア視察に参加して』

 2月に公立井波の倉知院長を団長とする「第2回欧州緩和ケア視察旅行」に参加しました。まず、ロンドン郊外にあるセント・クリストファー・ホスピスを訪ねましたが、この世界中から見学者が絶えないホスピス誕生の地は、交通量の多くない通りに面した目立たない質素な建物でした。教育システムが確立されており、緩和ケア・ホスピスに関する世界の情報センターでもあります。4病棟で48床のホスピスですが、200万人の住域をカバーし、毎日500人の在宅ターミナルケアを24時間行っていました。医療関係者の他に多数のボランティア(日本でいう無償ボランティアはいない)の支援があるとのことでしたが、日本人の感覚とはあまりにも違いすぎてピンときません。ホスピスを見学しましたが、簡素で普通の4人部屋という印象でした。家族が寝泊りする部屋があり、緊急時にそなえて予備の部屋も設けてありました。多数のボランティアが出入りしていました。死後3ヶ月と1年後に家族のミーティングを必ず行っています。

 

 

オランダでは、ベルギーとの国境に近い村のグループホームを見学し、その午後にロッテルダム近郊の先駆的なナーシングホーム(200床は身体介護用、60床は痴呆用、8床の個室はターミナルケア用)を、翌日はアムステルダムで大学メディカルセンターとナーシングホーム内にある緩和ケアネットワークと市中の8床のホスピスを見学しました。

 

4棟あるグループホームは6床6人が1単位です。日本では9人単位が多いと質問すると、家庭的な雰囲気で過ごすには6人が適当だといわれ納得しました。この州では、従来は大規模施設が中心だったのですが、徐々に各地に小規模施設を建築したと説明され、まさに日本の厚労省が最近提案している小規模多機能施設のモデルです。住宅とケアが一つの地域にあり、共に生き、共に働くことができます。グループホームにはナーシングホームやデイセンターが併設され、吹き抜けの食堂ではボランティアと一緒に大勢の障害者、高齢者が談笑していました。

 

 オランダは北欧並みの高福祉高負担の国です。マリファナを吸ってもよいし、飾り窓が知られているように、性産業が公認され、そして安楽死が法的に認められている唯一の国です。オランダでは、30%の人が自宅で死を迎えており、癌患者に限れば実に75%の人が在宅死です。日本の癌患者は大多数が病院で亡くなり、在宅死はほぼゼロで、3%が百二十余施設ある緩和ケア病棟で亡くなられます。オランダは多数のボランティアを含めた充実した医療・介護の在宅サービスのネットワークがあり、障害を持っていても在宅生活が可能であるノーマライゼーションの理念が浸透していることや、医療費は無料で、自由に使える年金が確保されているなどの日本とは全く違う背景がありますが、オランダ人は「自己決定」で在宅療養・在宅死を選んでいるようです。医療を受ける時も、自分で病院を選ぶことは出来ず、まずホームドクターの診察が必要ですし、介護を受ける際も、ナーシングホームへ入るか老人ホームか自宅かは審査会に決定権があるなど多くの制約があります。急変時の対応は、日本ほどスムーズではないものの、緩和ケア病棟やホスピスに関しては、いつでも受け入れる体制が整っているように思えました。

 

 建物を壊さないので、都市の景観は百年前と変わらないし、道路には必ず自転車専用路があるなど、日本とは風土も人種も違うイギリス・オランダですが、少子化、高齢化が徐々に進行しているのは同じです。ほとんどが公営か財団立である病院の数は日本に比べて両国とも少なく、入院も短期間です。欧州の人は、医療、特に病院での治療は金がかかるので、本当に治療が必要な時だけ医療費を使うべきだという認識が日本に比べて強いようです。日本の皆保険制度はいつでもどこでも医者にかかれるという世界に誇れる制度ではありますが、老人医療は本人の意志ではなく、家族の意向を重視しすぎる傾向があります。超高齢者にペースメーカー、人工股関節、栄養チューブなどの治療をするのは胸を張って医療費の無駄使いでないと言い切れるのか疑問です。日本人はもっと健康寿命や尊厳死について認識を深める必要があるのではないでしょうか。日本人の死生観や医療制度について考えさせられた今回の欧州研修でした。

 

 さて、4月に診療報酬の改正がありますが、医療費抑制策がますます強まり、病院機能の明確化が求められ、あやふやな理念の病院は淘汰される時代になりました。当法人には患者さんに安心して継続して療養してもらうため、さまざまな施設・在宅メニューがありますが、より一層在宅サービスを充実させ、多様なニーズにきめ細かく対応していきたいと思っています。病院でのケアマネージャーの常勤化が軌道に乗り、連携室では県下初の特殊疾患療養病棟開設がインパクトとなって特に基幹病院との連携がスムーズなようです。

 

昨冬は新聞社と共催で介護セミナーを開催しましたし、ボランティアのご協力を得て病棟毎に四季折々の催し物を行ったり、公民館などに出向いてセミナーを開いたりしていますが、地域に根ざし、開かれた施設であるということを認めてもらうには絶え間ない努力が欠かせません。今後、病院に隣接してグループホームの移転増床、通所リハビリの拡張移転、ショートステイ棟の増床を視野に入れながら、病院の改築を含め、法人の将来構想を模索中です。

 

紫蘭会理事長  笠島 學

 

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