医療を取り巻く情勢の最近の変化はめざましいものがあります。介護保険の導入と絡みながら第4次医療法改正が現実のものになりつつあります。カルテ開示の法制化が日医の反対により実質見送りとなったため、日医は病床を急性期と慢性期に区分することには反対していないので、今国会での法改正も有り得ます。これが通れば、10パーセント以上の病床が削減され、急性期病床は厳しい規制がかかるため、殆どの民間病院は否応でも定額が主体の慢性期病床に移行せざるを得ず、急性期病院の大幅減少による地方医療の崩壊が起こるでしょう。一方、19万床の療養型病床群は介護保険に移行しますが、特養や老健と競合させて淘汰され、近い将来に「病院」の枠外になります。法改正がなくても、診療報酬の先取りが行われ、医療保険適用の療養型には逓減制をきつくするなど、いずれにしろ来年は中小民間病院にとって厳しいものになるでしょう。
我々はこれらの難関に立ち向かっていかなければならないのですが、医療や介護の質の向上に懸命に努力し、情報公開に対応できる力をつけ、福祉分野への進出を考慮しつつ医療連携・福祉連携を更に推し進めるなど、院長だけのプランでなく、職員全体で将来計画を考えていくことが必要であろうと思っています。自法人の目先のことに一喜一憂するのでなく、長期の展望を持って生きがいやロマンのある医療・介護をやりたいものです。病院の役割は社会のために尽くすことだと思っています。
我が法人には介護支援専門員が20名いるなどのパワーがあり、7月から全職場部門の協力を得て、夕食の6時配膳を実現するなどの団結力も備わっています。リハスタッフを病棟配置制として家庭生活を念頭に置いたリハビリに近づけ、一人用浴槽を家族の方に見学してもらったり、患者様にデイケアを見学してもらい、家庭復帰へ取組んでいます。最近のケア・カンファレンスは殆ど家族の方の同席で行なっているので、家屋の状態や家庭環境に関する突っ込んだ討論ができます。豊富な知識と包容力を持つソーシャルワーカーが早く育ってくれることを期待しています。 おおぞらは県老健の研修指定施設に選ばれましたが、質の向上に一層研鑚されることを願っています。10月から病院でおおぞらホームヘルパーステーション分室を開設しますが、ヘルパーは原則常勤のみとし、随時病棟からの人的応援を得て、やりがいのある、働きやすい職場としてスタートさせたいと思っています。
おおぞら在宅介護支援センター・訪問看護ステーションほのぼの・光ヶ丘病院は在宅介護支援事業者として登録を済ませました。登録された介護支援専門員の方は高い質と透明性や調整能力が要求されますが、紫蘭会全体で支え合いますので持てる力を十分発揮して下さい。 10月より介護認定作業が始まりますが、介護を要する方やその家族の方が当法人を選ぶか否かは、我々の施設が安心・信頼されるに足る施設かどうかという判断にかかっています。患者様や家族の方にのみ選択権があります。我々は、医療や看護・介護の質は本当にこれでいいのか、改善すべき点はないのか、を真摯に考え、情報の透明性を高め、質の向上を絶えず図り、患者様から選ばれるような施設であるよう努力を重ねていくのは当然のことです。
紫蘭会 理事長 笠島 學