巻頭言 ほほえみ第45号(平成18年5月号)

巻頭言 ほほえみ第45号(平成18年5月号)

2006.04.15

12月から1月にかけて、介護療養病棟の廃止と医療療養病棟を大幅削減する計画が突然示され、4月から医療・介護報酬が引き下げられ、7月から医療療養病棟では、医療区分別の診療報酬となります。意識障害で胃ろうが造設され、痰吸引が一日数回の患者も医療区分1になりますが、医療区分1は社会的入院とされ、以前より4割カットの点数になります。貧富の差の拡大が切実になっており、政府案のように在宅基盤整備がなされないまま療養病棟が削減され、自己負担額がどんどん増えると、行き場を失う老人が多数出てくることが危惧されますが、国民はそのことを知らされていないので、無関心です。

 

同じ報酬だからといって軽い患者ばかりを引き受けてきた病院は非常に厳しくなりますが、我々は従来から医療も介護も必要な重症患者を積極的に受入れてきており、神経難病などが対象の県内唯一の特殊疾患を有しています。富大からの3人の助教授・講師の先生や、常勤医・派遣医による専門外来は、時間をかけて丁寧に患者さんを診ています。平成10年に政府から補助金をもらって新築した介護療養病棟百二十床が8年もたたないうちに廃止の方針というのは朝令暮改もいいところですが、増床せずに作った為ゆったりとした既存病棟の療養環境が今回の報酬で評価されました。30床の一般病棟は、手厚い看護で正看率7割を取得できました。疾患別に編成されたリハビリも、今年中には脳血管・運動器・呼吸器リハビリで最高ランクが取得できます。

 

医療処置が必要なショートステイ(療養介護)を稼動している病院は近辺では少ないので、在宅復帰をし易くするため、病棟のショートステイ用ベッドをふやし、法人以外の患者も引き受けたいと思います。

 

おおぞらに地域包括支援センターが市から委託され、4月からスタートしました。在宅介護支援センターとともに介護予防・権利擁護などに地域に根ざした活発な活動を期待しています。看護師が常勤しているグループホームおおぞらに認知症対応通所介護の併設を申請中です。

 

在宅サービスの一層の充実を図るため病院北側に建設中のショートステイ(生活介護)と通所リハビリ棟が9月末に完成します。2つのユニットからなるショートステイは家庭的雰囲気でケアを行なってくれるでしょう。広いスペースの通所リハビリには療法士を2人に増員して、パワーリハビリを導入しますが、介護予防にも本格参入するつもりです。ボランティアを含めた地域の方が気楽に立ち寄れる場にしたいと思っています。地域の集会場となるのも歓迎します。また、10月をめどに訪問リハビリを訪問看護から独立させて退院直後の患者さんのリハビリを充実させ、新築完成後に在宅部門が移動する従来のショートステイ棟には、重症患者に対応する療養通所介護の部屋を二、三室確保したいと思っています。

 

順調に受診者を伸ばし続けている人間ドック(サンシャイン・メドック)に最新のマンモグラフィーを導入し、政府管掌健康保険の指定施設を目指します。X線技師は全員認定資格を取ってください。

 

市街地一番町にある土蔵作りの民家を改修して、富山型民間デイサービス開設の準備をしていますが、地元の方と協力し合って、街おこしの一助になればと思っています。開設後は夜間対応訪問介護の稼動を検討しています。

 

法人で勤務しながらの介護福祉士合格者が今春13人にも達したことでわかるように、我が法人には向上心、やる気のパワーがみなぎっています。認知症指導者研修は当院に依頼があり、日本看護協会研修を受講する者もおり、看護学校実習指定病院になるための研修に参加する者もいます。療養病床大会や老健全国・ブロック大会などで今年も演題発表を行います。やる気のある人の研修には金銭的、時間的な手厚い支援を従来どおり行なうつもりです。

 

私は高岡を医療・福祉の後進地域にしたくありません。患者さんが継続して、安心して療養できるよう、地域の皆さんや患者・家族に選ばれるよう、職員の一人一人が医療・ケアの質の向上に、絶えず研鑽を積みたいものです。

 

紫蘭会理事長 笠島 學